楽しむオシゴト

物流業界が抱える2024年問題ってなに?

新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るうなか、働き手不足や輸出入が不安定な状態に陥った事を契機に、食材や生活必需品、その他あらゆるモノの価格が見直されています。

育ちざかりの子どもが多めの我が家でも、スーパーで買い物をすると明らかに支払いが増えたと感じるようになりました。

しかし実は今後さらに家計を苦しめるであろう事態が迫っています、それが物流業界の2024年問題です。

この問題により今よりも更にあらゆるモノの値段が跳ね上がる事態となる可能性がとても高いのです!

ピノくん
ピノくん
あまり聞いたことがない問題だよね
ゼペさん
ゼペさん
そうじゃな。しかし事前に知っておいて損はないと思うそ

いまの値上げも物流費の上昇なんだよね?

連日ニュースで報道されている販売価格の値上げ。取材でも「材料や物流のコスト高を吸収できなくなり止むを得ず…」と口を揃えて言ってます。すでに物流価格は上昇していると思いますよね。もちろんガソリン代も高くなったり国内の物流費が上がっているのは間違いありませんが、今この状況は主に海外からの輸入に伴うコスト増が原因なんです。

例えば日本が最も輸入をしている中国では、工場の労働者不足国のエネルギー政策により稼働が限定されるといった状況が続き、あらゆる価格が急騰しています。また海外→日本へ物を運ぶ際の海上輸入においてもコンテナ不足原油価格の高騰という問題があり、安定的に供給ができずプレミアム価格と化してグングン価格が吊り上がっています。
それでも消費は止まりませんので、作り手はプレミアム価格を受け入れるしかない訳なんですね、でこの予想外に膨れ上がったコスト(モノづくりにかかった費用)を回収するために販売価格を値上げせざるを得ない、という状況なんです。

物流業界が抱える2024年問題について

2024年問題とは国内物流業界の「働き方改革」の実施により起こるであろう問題のことです。働き方関連法により各業界で長時間労働の是正や残業代の支払いについて見直されてきましたが、実は自動車の運転業務については猶予されていたのです。それが2024年4月に物流業界に対しても適用されるということなんですね。

ピノくん
ピノくん
???それって悪いことじゃないように聞こえるな?
ゼペさん
ゼペさん
雇用する企業側と雇用される労働者側の視点によって全く問題の捉え方が変わるのじゃな

インターネット上での買い物も当たり前となった昨今、流通される荷物は急増を続けています。それに対して圧倒的にモノを運ぶ側(特に運転手など)が不足していて深刻な状態となっています。

そこへ追い打ちをかけるように2024年問題が迫ってきますので物流業界は今あらゆる変革をしようと躍起です。

2024年に物流業界で変わること

2024年を期に物流業界では以下の大きな変化が起こるといわれています。

時間外労働の規制や賃金の見直し

ます時間外労働の割増賃金の引き上げです。トラックの運転手さんは荷物を届ける場所によっては長時間勤務を余儀なくされる場合も多いですが、物流業界も今後、月間60時間以上の時間外労働の割増賃金率を25%から50%以上へと引き上げる必要があります。

そして時間外労働自体も規制されます。規制の適応により法定労働時間以外に働ける時間は年間960時間までとなります。ひと月に換算すると80時間/月 以上の残業はしてはいけない、ということです。

同一労働同一賃金

もう一つの変化は同一労働同一賃金です。同じ仕事内容をこなしている人は同様の待遇にする必要があると定めているルールで、これも数年前から徐々にフルタイムのパートタイムや契約社員をみな正社員に雇用しなおしたりと動き出している企業や業界もありますね。
雇用形態の違いによって生じている格差をなくそうというのが目的です。今は時限措置がとられている物流業界も今後は同一労働同一賃金を遵守しなければなりません。たとえば正社員と契約社員どちらに対しても同様の手当を支給することが義務となります。

ピノくん
ピノくん
今や残業をしない、させないなんて基本なんじゃないの?
ゼペさん
ゼペさん
産業によっては少しずつ見直されているね、ただ物流業界は労働者の過酷な長時間労働のおかげで成り立っていた、とも言えるわけじゃの。

物流業界の現状は…本当に変わるの?

国土交通省は物流業界(自動車運転業務)の現状として、以下の通り述べています。

①労働時間
・ 年間賃金は、労働時間が長いにも関わらず、全職業平均と比較して
約1~3割低い。
②賃金
・ 平均労働時間は、全職業平均と比較して約1~2割長い。
・ 平均所定外労働時間は、全職業平均と比較して約2~3倍の長さ。
・ 週間就業時間が60時間を超える者の割合は約4割であり、全職業平均の約3倍。
③運転者不足
・ 有効求人倍率は全職業平均の約2倍。人手不足が年々深刻化。
・ 女性比率は、全職業平均の1割未満と低い。
・ 平均年齢は、全職業平均と比較して約3~17歳高い

参考:自動車運転業務の現状(国土交通省)

運転者の高齢化

また物流業界(ドライバー)の高齢化も他業界と比較すると明らかに進行しています。
以下のアンケート調査によるとドライバーの実に90%近くが40代~50代。
20代~30代の若くて体力も十分な層はわずか10%しかいません。

参考:高齢化進むドライバー 人手不足倒産や物流崩壊を懸念|物流ニュース|物流ウィークリー|物流・運送・ロジスティクス業界の総合専門紙 (weekly-net.co.jp)

長時間労働&身体を酷使するのに対して賃金が低い

トラックドライバーは他職種と比較して長時間労働に対して賃金が低いという傾向があります。賃金が平均よりも低いにもかかわらず、長く働かざるを得ないのが現状です。

〇トラックドライバーの長時間労働の要因のひとつは、荷主庭先での
長時間の荷待ち時間・荷役時間
〇荷主企業と運送事業者が一体となって、荷待ち時間の削減、荷役
作業の効率化等長時間労働の改善に取り組むことが重要

参考:トラック運送業の現状等について(国土交通省)

たとえば↑の参考資料のとおりドライバーは荷物を長距離運んでくれるだけでなく、届け先に荷物を降ろしてくれる訳ですが、荷物を降ろすまで順番を待たされたり、少ない人数(時にはドライバーさんだけ)で荷物を降ろしたりという状態が慢性化しています。

EC活性化により荷物が激増&トラック積載の非効率化

これは皆さんも分かりやすく実感していると思います。この数年で明らかにオンラインショッピング(EC)をする割合が増えました。これにより物流業界は個別宅に届ける小さな配送物が激増した訳なんですね。

個々に届けるということで荷物量が増えるというのは非常に分かりやすいですが、企業間(BtoB)と企業から消費者へ(BtoC)の構成割合が変化したことにより、トラック1台当たりの積載量が少なくなり効率が悪くなっているという現状があります。
企業間の輸送は運びやすさも意識して大きな段ボールに出来るだけまとめています。ところが顧客への配送は、段ボールの大きさや重さ、形状もバラバラで、配送中に荷崩れなどを起こさないように気を付けると、トラックのスペースをフル活用などとても出来ないんです。

人出不足で高齢化が進んでいるのに、荷物はひたすら増えて、トラックに荷物がたくさん積めなくなってきている。

これが現状です。

ピノくん
ピノくん
ひゃー大変だ!これは一刻も早く働き方改革を進めないと!!
ゼペさん
ゼペさん
働き手の視点にたてばその通りじゃな、今まで甘え過ぎてきたのじゃ。ただこれから消費者は覚悟も必要じゃぞ

企業も様々な取組みを始めています。

物流業界が抱える課題に対して、企業もあらゆる取組みをしています。

例えばシステム化やITの活用です。消費者に分かりやすいところでは不在宅への再配達は時間を指定しなければならなくなりましたよね。今までは、荷物を届けるまで何度も何度も不在宅へ足を運んでいました。しかし業務効率化の為にほぼ大手は各社同時的に見直しを行いましたね。はじめは「なんで連絡しないといけないの?」なんて不満を言う消費者も少なくないと思いますが、一体となって変わっていかなければ改革はできないですね。

また運転者の労働生産性を向上させるためのデータ分析システムも多く導入されるようになりました。いつ、どのような作業をしたか、渋滞や荷役待ち等どこで無駄な時間が発生したかのデータを収集分析して、現場にフィードバックすることで労働生産性が向上します。

荷物の配車手配も今までは担当のドライバーさんに電話をしていましたが、Web上で予約を入れる流れがスタンダード化してきましたね。

またこれから進みそうな取組みとしてはモーダルシフトへの切り替えが考えられます。

モーダルシフトとは従来の長距離トラックに頼りきらず鉄道や航空機、船などによる輸送を進めていこうという動きです。これにより2024年問題で起こるドライバーの長時間労働を少しでも解消しようとしています。

あとは「今日送れば明日には届く」というような、これまでの当たり前を変える必要があると思います。到着時間が翌々日になるだけでも、ドライバーの負荷はだいぶ軽減されますね。「はやい」だけがサービスではない、という事を利用者も共感していかなければ2024年問題の解決は成し得ないと思います。

それでも取組みには限界…結局は価格に転嫁される

ここまでで、物流業界の「現状」とこれからの「課題」2024年問題が何となく見えてきたと思います。働き方改革は業種を問わず絶対に必要なことです。企業も改善に向け精一杯の努力をするでしょう。

しかし、それでも今の消費量や活性化するEC市場に対応はしきれないと思います。

システム導入や人員の増加、賃金の是正により物流業界の人件費や販売管理費は大幅に上昇するのは間違いがありません。これを補うために配送費用の大幅な値上げもせざるを得ないでしょう。

物流はお店→自宅だけではありません。国内だけでも例えば港→中央倉庫→各営業倉庫→店舗と何度もモノは流れていきます。そこにその都度、上昇した物流費がかかる訳ですから、生産会社や販売会社も商品価格をまた見直さざるを得ない状況に陥る可能性が極めて高くなります。

その時にまた「辛い」と言い始めるのは消費者です。今までドライバーさん達の絶え間ない努力や苦労があって今の値段で欲しいモノが買えているのに、働き方改革をして「正しい働き方」にすると世の値段は跳ね上がります。しかし2024年問題は労働者側から見れば当然にように見直されなければならない事です。私達も文句ばかり言わず、現状を理解して受け入れる体制がいま求められていると思います。

では消費者はどうすれば良いの?と言えば、結局はいまと同じ。無駄な支出を減らすことと、あらゆるモノの値段が上がっても困らないよう稼げるようになることです。

ピノくん
ピノくん
結局、両学長と同じような話になったじゃないか~
ゼペさん
ゼペさん
外的な環境変化は個人ではどうにもならないからの、結局個人がするべき準備はいつ何時も同じなのじゃ

これからどんな時代になるのか…確信は持てませんが何事も知ることは重要です。

今回は物流2024年についてまとめました。