今日は私が従事しているディストリビューターと呼ばれる職務について書きます。
小売業界の方以外にも知ってもらいたいですし、これから社会に羽ばたく学生さん達にも「こんな仕事もあるんだ」と思っていただければ幸いです。
ディストリビューターはアパレル業界などでは略してDBと呼ばれています。
とても重要な役回りであると自負してはいますが、どうにも認知度が低い職種です。
ディストリビューターの語源。例えるならば?
語源はディストリビューションです。
distribution=商品が生産者から消費者へと渡っていくこと。販売。流通。
とありますが、流通をさせる指示を出す役回りになります。
企業によっては”コントローラー”などと呼ばれたり、”在庫管理”なんて雑に括られたりもしますが、小売業にとって在庫こそ利益を生み出す原資です。
企業内でのポジションは、サッカーで例えるならボランチ(今はインサイドハーフ?)、遠藤選手のような、戦国武将で例えるなら豊臣政権下の石田三成(合戦で適正に兵糧を分配する)のようなイメージを持っています。めちゃくちゃキーパーソンですよね?
ディストリビューターの仕事内容
ディストリビューターはMD・バイヤーが仕入れてきた商品の総量や特徴を踏まえて販売計画を作成したり、売上効率が最も良くなるよう分析をして店舗や倉庫への配分調整を行います。
MDはマーチャンダイザーといって商品開発や商品構成を決める役割の職種です。販売業においてはブランドリーダーや役員級の方が多い印象の花形ポジションです。
バイヤーはMD計画に従って商品を買い付けてくる人ですね。
企業の良し悪しはバイヤー次第といっても過言ではありません。優良企業には必ず素晴らしいバイヤーがいて適切な価格、品質、量を仕入れてきます。
我々ディストリビューターは彼らが調達してきた商品を、どのように店舗へ分配すれば求められる成果に繋がるかを分析し、適正量の振り分け指示を出します。
私の会社では倉庫など物流部門も3PLではなく自社で揃えていますので、物流部門へ連絡をとり指定期日までに店舗へ指定数を発送するよう依頼します。
例えば会社が〇〇ビューティーという美容商品を3か月で500個売りたいと計画しています。バイヤーは計画に基づいて700個を仕入れました。ディストリビューターは店舗毎のカテゴリー実績や過去の類似アイテムの実績、立地条件や客層などを分析して、最も販売力が高い店舗へは多めに、あまり売れなそうな店舗へは少し(あるいは送らない)という計画を作成します。
例えばA店の過去の類似アイテム実績を調べて、ここは駅前で若い客も多くビューティー関連は好調なので初回から多めに送ろう。逆に地方店Bは高齢者が多めで過去実績もイマイチ振るわなかったので、様子見で数個のみ送ろう、といった塩梅で振り分けていきます。
ディストリビューターは何人くらい必要なの?
これは逆に教えて欲しいくらいです。人数体制は企業によってまちまちだと思いますが、私の場合は50店舗くらいまでは一人で担当をしていました。
はじめは社長やMDが直接采配をしていましたが、店舗数も拡大するなかで最重要パーソン達がここに時間を費やし過ぎるのはダメじゃないか?と動き始めたのが私のポジションを確立するきっかけでした。そこからシステム部門と協力し、できる限り簡単で効率的な発注システムの開発を行い、徐々に業務を引き継いで現在に至ります。
大手の話を聞きますと多ブランド展開をしている企業では1ブランドに1名、多店舗展開をしている企業ではエリア単位で1名というのが多いようです。
ディストリビューターに必要なスキル・能力は?
ディストリビューターは前述の通り、商品の流れや売上全体を把握する必要があります。
またMDやバイヤーなど商品部門、スーパーバイザーや店長など販売部門、倉庫などの物流部門の情報を吸い上げて調整しベストな選択をしていくという調整能力が求められます。
また様々な分析データを読み込みますので数値が得意な人の方が向いています。
分析能力については明確な基準が分かりませんので、どこまで出来ればOKとも言えませんが、一方の偏った見方にならないよう冷静に客観的に判断する能力が重要です。
そして何より誰より商売が好き!という気持ちが大事かと思います。
注意しなければならないのは、中小企業診断士の勉強でも登場しましたが「分析麻痺症候群」にならないこと。つまり机上で分析ばかりして、実態をみないという状態にならないようにしなければなりません。
在庫分析、売上分析、季節動向などあらゆる尺度から店舗診断を行いますので、気を付けないと「何でも分かったつもり」になりがち。実際に商品を販売している販売スタッフやお客様の声にしっかり耳を傾け、店の状態を実際に目で確認することがとても大切です。
追求すればするほど奥が深い
ヒト・モノ・カネとはよく言いますが小売業ってモノが売れてナンボです。
勿論、売れるショップになるには人材や立地や空間デザインなど様々な要因が必要不可欠ですが、すべて商品がなくては始まりません。
その商品供給の中核を担うディストリビューターという仕事は、もっと世に評価されても良いのではないかと感じています。
興味や学びを絶やさず、常に市場へアンテナを張りめぐらせることで、ディストリビューターは企業に大きな成果をもたらす事ができます。分析、店舗巡回と時間はいくらあっても足りませんが、これからも深く追求し、企業や世の中に貢献していきたいですね。